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住宅に使われる断熱材の特徴、メリット・デメリット、健康住宅におすすめの断熱材を紹介しています。
断熱材とは、外からの暑さや寒さを遮って、室内の温度を一定に保つために使われる資材のことです。注文住宅の場合、断熱材も自分で選ばなくてはいけないので、どういった種類があるか、特徴を知っておくと良いですね。
断熱材には、大きく分けて次の3種類があります。
無添加で住んでいる人にも優しい自然素材から作られた断熱材です。調湿、結露防止、防虫効果にも優れていて、高価なものの、その性能は50年以上の耐久性が証明されています。
天然のウールから作られた断熱材は「羊毛断熱材」と呼ばれています。
ウールの繊維が絡まることで断熱性を高め、夏も冬も室内の温度を快適に保ってくれます。また、湿度を調整する調湿性も持っているため、壁の中に発生する結露を防げるのも特徴。防音効果もあるなど、複数のメリットを兼ね備えています。
耐久年数が50年以上と長いのも注目したい点。家の経年によって発生するメンテナンス費用を抑えることができるでしょう。
さらには、羊毛断熱材には燃えにくいという特質も。一見すると燃えやすそうに思えるかもしれませんが、実際はそうではありません。防火認定も取得しており、万一火事になったとしても燃え広がりにくい素材です。
現在、ウールからできた羊毛断熱材は、あまり施工で扱っている業者がありません。そのため施工実績がない業者があるなど、職人の技術にも差が見られます。羊毛断熱材を採用したい場合には、施工実績のある業者を探すのが賢明です。
また、ウールにはほかの断熱材よりコスパが高いというデメリットもあります。
断熱材にはほかにポリスチレンフォームやフェノールファームといった素材がありますが、これらのほうは熱伝導率が低く断熱性が高いのに、ウールのほうが施工費用は多く見積もられます。
セルロースファイバーは、天然の木質繊維から作られている断熱材の一種。
断熱性が高く、原材料の80%が新聞紙からできており、地球に優しいのと同時に実は高い防火性を誇る素材です。
自然由来なので吸放湿性に優れ、湿気を吸収したり、逆に放出することで室内を適度な湿度を保つことができます。また、壁内に発生する結露を防ぐことからカビの予防にもなります。
さらには大きなメリットと言えるのが、断熱材を隅々まで行き渡らせることができる点。隙間をなくすことで断熱性がさらに高まります。
第一に、セルロースファイバーの断熱材は、施工にとても手間がかかります。セルロースファイバーを施工している最中は、建物内部のほかの部分の工事も行えません。
こうした施工の面も合わせ、セルロースファイバーはコストが高いのもデメリットと言える点。セルロースファイバーの密度を高くしようとすると、その分、大量に必要となってしまうのです。
また、長期的な面でも注意点が。住宅を建築後、長い期間が過ぎると、セルロースファイバー自身の重さで断熱材が沈下することがわかっています。すると、上部に隙間ができる可能性があり、断熱効果がその分、落ちると考えられています。
木質繊維ボード(木繊維断熱材)の原料となっているのがリサイクル可能な間伐材や古材。間伐材や古材をチップ状にし、高温の水蒸気によってほぐしてから、その繊維を圧縮してボードとして成型します。
「ウッドショック」と呼ばれる木材不足が続いている現代では、のちのち日本国内でもこのような伐採サイクルに考慮した木質繊維ボードが大量に生産されると考えられます。
木質繊維ボードはもともとが自然素材であるため、セルロースファイバーと同じく吸放湿性や保湿性に優れ、結露しにくいのが特徴。
また、重量があり、防音や吸音といった効果も発揮します。
木質繊維ボードは海外に比べ国内では導入している業者が少なく、こだわりがあるのであれば探さなくてはなりません。
また、ほかの素材と比べると費用が割高なのもデメリットと言えるでしょう。
注意点として挙げられるのは、素材が木材からできてるため、シロアリ対策をしっかりと行わなければならないことです。
炭化コルクの断熱材は、「コルク樫」と呼ばれる植物の厚いコルク層から作られる物。コルクの粒を型にはめ、高温の蒸気で加熱しつつ圧力を加え、断熱材などに加工されています。
加工される際にはコルク自身から出る樹脂成分で自然に固まることから、糊を使う必要もありません。
つまり炭化コルクは天然コルクからできており、使われなくなった際には自然に返すこともできる環境にも人にも優しい断熱材なのです。
性能的にも優れており、断熱性・防音性・調湿性・防虫性、そして耐腐食性を備えています。
炭化コルクはエコロジーであるだけでなく、さまざまなメリットも持ち合わせている優れた断熱材です。
その一方、日本の住宅で数多く用いられている素材に比べ、価格が高いのがネック。また、厚みがあるとカットしづらくなるという加工性の問題も挙げられます。
しかし、ワインの栓としてコルクが長年使われていることからもわかるように、水廻りには特に向いている断熱材です。
もしも利用したいのであれば、水廻りのみに用いるなど、一部分だけ採用してコストを抑えるといった使い方もできます。
ポリエステルは、飲料用のボトルや衣類の繊維としても使用されるなど、直接ふれても何ら問題のない素材です。
また、虫食害や発酵腐敗の心配がないのも大きなメリット。腐食を防ぐための薬剤を混入させる必要もなく、環境ホルモンを放出することもありません。
不用になり、燃やしたとしてもダイオキシンやシアンガスといった有毒ガスを出さないのもポイント。完全に燃え尽きた際には水と炭酸ガスに分解され、環境や人に害を与えることはありません。
普及が図られてはいますが、再生ポリエステル繊維の断熱材は、グラスウールやロックウールと比較すると、コストがかかるでしょう。
ガラスを繊維状にして作ったスタンダードな断熱材です。低価格のわりに耐久性・耐火性・吸音性が高く、木造建築では最も多く利用されています。
グラスウールはその名の通りガラスからできている断熱材です。溶けた高温のガラスを遠心力などでごく細い繊維状に加工したもので、現在の住宅建築では断熱材として多数用いられています。
その特徴のひとつが、価格の安さ。ほかの断熱材と比較しても安上がりで、加工しやすいため施工にかかるコストも低く抑えられます。
機能面では、耐久性が高く、燃えにくい上に高温にも強いといったメリットを持っています。
グラスウールは価格的にも、さまざまな機能面にも優れている断熱材ですが、湿気に弱いというデメリットがあります。
グラスウールはガラスでできていますから、もともと自然に吸水する性質は持ち合わせていません。
しかも、繊維の間に一時的に水をためこむと断熱性が低下するおそれがあります。そのため、グラスウールを断熱材に用いる際には防湿フィルムなど、湿気対策をほどこす必要があります。
また、施工の際、壁と壁の間をグラスウールで隙間なく埋めるのは難易度が高いと言われています。グラスウールを断熱材に採用する場合は、施工実績豊富な業者がおすすめです。
ロックウールは玄武岩や安山岩といった鉱物を高温で加工し繊維状にした断熱材の一種です。
耐熱性・断熱性が高く、繊維の隙間に豊富な空気をため込み、空気の層によって外気温の上下から室温の変化を防ぎます。
特に耐久性には優れており、経年劣化が少なく、長期にわたって断熱効果を発揮するのもメリット。
また、空気の層による防音性にも優れ、空港や商業施設といった周囲への騒音が響きがちな場所にも多用されています。
まず、ロックウールは広く普及しているグラスウールなど、ほかの素材よりも価格が高い傾向にあります。
また、「輻射熱」には効果が期待できないことがわかっています。輻射熱とは太陽などから放出される遠赤外線などの熱線が、物体に当たった際に生じる熱のこと。電磁波によって熱が発生するため、たとえ大気が冷たくても、光の持つ熱が直接物質に伝わってしまいます。この輻射熱を反射する遮熱シートを併用するのがロックウールの場合はおすすめです。
発泡剤やポリスチレン樹脂などのプラスチックを発砲させて作った断熱材です。3種類の中では歴史が浅く、耐久面で不安定さがあるものの、断熱性と施工のしやすさから選ばれています。
硬質ウレタンフォームの「ウレタンフォーム」とは、ポリウレタン樹脂の泡のこと。
ボードとして成型されたもののほか、現場で発砲させて吹き付ける方法や、工場で吹き付けされたものを使用するなど、用途はさまざまです。
硬質ウレタンフォームの気泡には、熱伝導率のごく低いガスがそれぞれ含まれており、これにより層が薄くても高い断熱性を発揮します。
また、「自己接着性」と呼ばれるほかの素材には見られない密着性を持っているのも特徴。自らくっつき合うために、導入すると気密性の高い住宅を建築することができます。
グラスウールなどの繊維を使った断熱材と比較すると価格は高くなりがちです。
また、気密性の高さが逆にデメリットになることも。換気性能を高めるためには、同時に施工を行わなければならず、コストがかさみます。
さらには、気泡によって防音性には優れているものの、吸音性を持っていないことにも注意が必要です。室内の音が反響しやすく、静かな環境を求めている人には気になることも。
フェノールフォームを用いた断熱材は、「フェノール樹脂」に発泡剤・硬化剤などを混合したもの。フェノール樹脂は、植物以外の原料から人工的に合成されたプラスチックのことです。
そんなフェノール樹脂を原料とするフェノールフォームの大きな特徴が、熱伝導率が非常に低いこと。熱が伝わりにくいため断熱性が高く、耐熱性も持ち合わせています。プラスチックという素材を原料に持ちながら、フェノールフォームは熱に強いのです。しかし、水に強いのはプラスチックを原料に持つがゆえで、良いところはしっかりと受け継がれています。
フェノールフォームは高い断熱性を保有する一方で、価格が高いというデメリットがあります。断熱材として採用した場合はコストをしっかりと把握してからが良いでしょう。
また、原料がプラスチックなので紫外線や風雨にさらされることで劣化することがあります。ただし、外壁材などで保護されていれば、あまり心配する必要はありません。
フェノールフォームはシロアリ対策にも必要です。しっかりとほどこしておかないと被害を受けることがあります。
ビーズ法ポリスチレンフォームは、発泡スチロールやフォームスチレンという別名で呼ばれている断熱材です。
多くのメリットを持ち、中でも軽量で衝撃にも強いこと、加工しやすいことから扱いやすい素材として知られています。
それでいで高い断熱性と耐水性を持っているのもビーズ法ポリスチレンフォームの大きな特徴と言えるでしょう。
さらには、もしも燃えたとしても有毒性が低いことなどもメリットとして数えることができます。
比較的に燃えにくいビーズ法ポリスチレンフォームではありますが、それでもグラスウールといった繊維による断熱材よりは燃えやすい素材です。難燃剤を混ぜ込むことで難燃性は得られるものの、不燃性に変わるわけではありません。
ほかにもシロアリの被害に遭う可能性があるという弱点も持っています。断熱材に使用する際は同時にシロアリ対策をほどこすのが賢明です。シロアリ対策をした上で、定期的なメンテナンスも行えば、必要以上に不安がることはありません。
「押出法ポリスチレンフォーム」は発泡プラスチック系の断熱材で、素材を発泡させながら押し出して硬い板状に成型させたもの。
熱伝導率が低く、熱が伝わりにくいことから断熱性能に優れています。
プラスチックを原料としているために水分に強いのも特徴。水廻りを囲む断熱材としても重宝します。
軽量であることもまたメリットのひとつ。軽いために運搬しやすく、施工でも楽似合使えます。
押出法ポリスチレンフォームは、グラスウールやロックウールといった繊維からなる断熱材よりは割高。その分、建築費も上がってしまいます。
また、難燃剤を添加していて燃えにくくはありますが、不燃というわけではありません。
そしてビーズ法ポリスチレンフォームと同様にプラスチックを原料としているためシロアリの被害に遭う可能性があります。採用する際には同時にシロアリ対策をほどこしましょう。
日本の住宅は海外の住宅に比べて寿命が短く、平均で約30年とされています。その原因となるのが、木材の腐食です。
冬場、エアコンやヒーターなどの暖房を使用すると、室内は暖かく保たれますが、家の北側や浴室、脱衣場などが寒いことがあります。その場合、温度差により壁の中に結露が生じている確率が高くなります。結露が原因でカビや菌が繁殖してしまうと、家は徐々に腐っていくでしょう。つまり、断熱性の低さが家の寿命を短くしているのです。
暖かい場所から急に寒い場所へ移動すると、血圧が急激に変化してヒートショックを起こす場合があります。特に65歳以上の方に起こりやすく、2011年には年間17,000人の方がヒートショックが原因(体調の変化や転倒、溺死を含む)で亡くなっているそうです。これは、交通事故の4倍近い数値。つまり、断熱性が低いがために、健康被害が起きていると言えます。また、ヒートショックほど危険ではなくても、冷え性に悩まされている方もいるでしょう。人によっては年中手足が冷えるため、気分まで滅入ってしまいます。
近畿大学の研究データによると、断熱性の高い住宅に住み始めてから、アトピー性皮膚炎やせき、喉の痛み、気管支喘息などの症状が抑えられたという結果も報告されています。健康的な生活を送るためにも、家を建てる際には、断熱材の質を十分に吟味しましょう。
住宅の断熱性を高めるには、良い断熱材を選ぶことが重要です。断熱材は大きく分けると、「天然素材系」「繊維系」「発泡プラスチック系」の3つになります。天然素材系は「ウール」や「セルロースファイバー」。繊維系のものは、「グラスウール」や「ロックウール」などがあり、発泡プラスチック系には「硬質ウレタンファーム」や「ウレタンフォーム」「フェノールフォーム」などがあります。
一般的によく使われる「グラスウール」は、繊維質のため住宅のほとんどの部位に使用できるのがメリット。しかし、水で濡れてしまうと、断熱材としての機能が失われてしまいます。もし、施工不良などがあった場合、壁と壁の隙間に水分が入ってしまうと使えなくなってしまうでしょう。
「ウレタンフォーム」は空気を含んでいるため気密性・断熱性に優れているのですが、石油系素材のため万が一の火事が起こると有毒ガスを発生する恐れが指摘されています。また、隙間なく吹き付けて使用するのですが、経年劣化によりウレタンが縮んでしまうと、気密性・断熱性ともに低下してしまいます。
対して自然素材系のものは、湿気に強いだけでなく防虫効果も期待できます。また、50年以上長持ちする素材も。日本の気候は湿気が多いため、家を建てる際には、自然素材系の断熱材をおすすめします。
断熱材は、家の外からの熱や冷気を伝わりにくくし、家の中の熱を外に逃さないようにするための材料です。壁の中に設置して、外気の影響を減らす役割りがあります。つまり、住宅の断熱性能を高めるには、熱伝導率の低い断熱材を使用すると良いということ。ただ、断熱材の良し悪しは、熱伝導率だけでは決められません。空気の流れや電磁波などによる影響も考慮する必要があります。
断熱材は、熱の伝わりにくさだけで選ぶと失敗します。ここでは、良い断熱材を選ぶ際のポイントを5つご紹介します。
万が一、火災が起こった場合、燃えやすい断熱材を使用していると、火の回りが早くなり、家族の命を危険に晒してしまうことになりかねません。燃えにくい素材であることは、重要視するべきポイントです。
万が一、火災が起きて断熱材が燃えてしまった場合、有毒ガスが発生しないかどうかも重要。火災そのものより、一酸化炭素中毒や窒息が原因で亡くなるケースも多いからです。
水に弱い素材もおすすめできません。水や湿気に晒されると断熱材として機能しなくなってしまうためです。水は断熱材に使用されている素材よりも、10倍以上も熱を通しやすいと言われています。
熱を加えることで、溶けたり変形したりするプラスチック素材もおすすめしません。形が変化することで、気密性が低下してしまいます。「ポリエチレンフォーム」「ポリスチレンフォーム」がそれにあたります。
断熱材の性能を十分に活かすためには、気密をしっかり取る必要があります。隙間があると、それだけ熱は伝わりやすくなってしまいます。気密を取るには、断熱材を取り付ける職人の技術が重要です。断熱材の施工技術が確かな工務店に、依頼するようにしましょう。
断熱材にもさまざまな種類がありますが、健康住宅にこだわるのであれば、自然系素材が安心です。断熱材で最も一般的なグラスウールは、本体の重さから隙間ができやすく、内部結露が発生しやすくなります。内部結露が発生すれば、見えないところでカビが繁殖して、室内に浮遊することで、アレルギーの原因となることも。
一方、自然素材系のセルロースファイバーは、より密度が高く、断熱性にも優れているため、グラスウールと比べて年間の電気代が87,000円も節約できたというデータなども報告されています。