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人々の健康な生活を脅かすさまざまな健康被害。その中には、害獣によってもたらされるものもあります。ここでは、害獣被害の中からハクビシンによる被害を取り上げて、その概要や対策について学んでいきましょう。
ハクビシンによる代表的な健康被害が、家庭内へのノミやダニの持ち込みです。ノミやダニに噛まれると、蚊に刺されたときと同じような赤い腫れやかゆみが生じます。しかし、ノミやダニの場合は蚊に刺されたときより治りが遅く、症状が長引きます。
また、ダニは広く知られている通りアレルギーの原因ともなるので、ハクビシンによって家庭内にダニが持ち込まれると、アレルギー発症のリスクが高まります。
ハクビシンは、縄張りをアピールするために決まった場所にフンをします。そのため、屋内の屋根裏などにハクビシンが住み着くと、その場所は常にハクビシンのフンがしてある状態になります。
ハクビシンをはじめとする野生動物のフンには雑菌が多く含まれているので、特に湿度が高くなる梅雨や夏場になると雑菌が大量に繁殖するのです。しかも、ハクビシン自身は雑菌に対する免疫力が高いため、長期間に渡って雑菌を媒介し続けます。
ハクビシンによる健康被害が及ぶのは人間だけではありません。イヌやネコといったペットにも健康被害が及ぶ場合があります。ペットの場合、人間なら腫れやかゆみ程度で済むようなノミやダニなどに対しても致命的な感染症を発症する危険性があるのです。
ハクビシンは害獣ではあるものの、捕獲や捕殺は鳥獣保護法によって禁じられています。そのため、ハクビシンの対策は「住居への侵入を防ぐこと」となるでしょう。
ハクビシンの住居への侵入を防ぐ方法は、侵入経路を塞ぐ、侵入経路となりやすい木などの足場を取り除く、エサとなる生ゴミや食べ物を見つかりやすい場所に放置しないなどがあります。
また、ハクビシンはにんにく、石油、木酢液の臭いを嫌うので、侵入されやすそうな場所にそうしたものを塗布しておくのが有効です。オオカミの尿に含まれる成分も忌避剤として使えます。
動物から人間に感染する感染症を「動物由来感染症」と呼びます。「人獣共通感染症」という呼び方もありますが、厚生労働省ではこうした感染症を人の健康問題として定義しているので「動物由来感染症」という名前を使っています。
人間の感染症には医学が、動物の感染症には獣医学が対応することになりますが、動物由来感染症は医学と獣医学が協力して対応することになります。
動物由来感染症の感染経路は、直接伝播と間接伝播の2種類があります。直接伝播とは、病原体が動物から人間に直接感染する場合で、噛み傷や引っかき傷などから感染するパターンです。ほかにも、口の周りを舐められたり傷口から感染したりすることもあります。
ベクター媒介は、間接伝播の中でも動物と人間との間になんらかの媒介物が存在する場合で、病原体を別の生物が人間の体に運ぶパターンです。
環境媒介は、間接媒介の中でも動物の体内から出た病原体が水や土などを通して人間の体内に侵入するパターンを言います。
家畜や魚介類などの食用肉をとなる動物に病原体が感染している場合、十分な熱を加えていないとそれを食べた人間が感染症に感染することがあります。
ペットは人間との距離が非常に近い動物です。そのため、噛まれる、爪で引っかかれる、フンや尿に触れるといった形で動物から人間への感染が起こりやすくなっています。こうした接触は動物の種類によらず起こりやすいので、ペットを飼う際には気をつけなくてはいけません。
最近では一般的なペットであるイヌやネコ以外にも、いわゆるエキゾチックアニマルと呼ばれるさまざまな動物をペットとして飼育する人も増えています。こうしたエキゾチックアニマルは未知の感染症を持っている危険性があるので、飼育の際には特に気をつける必要があります。
普段、野生動物と接触する機会はあまりないので、野生動物からの感染はあまりないと考えられがちです。しかし、実際にはタヌキ、イノシシ、サル、キジなどの動物は生息域が人間の生活圏と近いため、土地にもよりますが接触する機会が多いのです。
レクリエーションなどで野外を訪れた際にも野生動物と接触する機会があります。野生動物は未知の感染症を持っている危険性があるので、野外で遭遇した際には下手に近づかないようにすることが大切です。
日本では、イヌを飼う際には狂犬病予防法に基づいて飼いイヌの予防注射と登録が義務付けられています。市町村窓口で忘れずに登録しておきましょう。
ペットと言っても動物なので、過度な接触を避けることは大切です。特に、感染症の病原となる細菌は口の中にいることが多いので、口移しでの餌やりやスプーンや箸の共用は避けましょう。
動物自身にはなんらかの症状がなくても、人間に有害な病原体を持っている場合があります。そうした病原体は、動物の体毛や唾液などを媒介して人間に感染します。そのため、動物に触った後にはかならず手洗いうがいを徹底しましょう。
飼っている動物の生育環境を清潔にすることは、飼い主の健康を守ることにも繋がります。こまめにブラッシングや爪切りをして、身の回りを清潔に保ってあげましょう。また、ケージ内などの寝床も、敷物やタオル、水槽などは細菌が湧きやすいのでこまめに洗うようにして下さい。
糞尿の放置は衛生環境の悪化を招きます。糞尿が乾燥するとその中に含まれている病原体が空気中に放散されやすくなり危険です。
室内の空気を清潔に保つためには、定期的な換気が大切です。ペットを買っている環境で換気をしないと、羽毛や乾燥した排泄物、ペットの体についたゴミやホコリが空気中に舞い散りやすくなるので、感染症に感染する危険性が上がります。
野外のレクリエーションなどの際に野生動物を見かけると、物珍しさから触ってみたくなることもあるでしょう。しかし、野生動物は未知の病原体を持っている危険性があるのでむやみに触ってはいけません。また、鳥獣保護法の観点からも野生動物の飼育は避けましょう。
ペットを飼っている際に体調がおかしいと感じたら、早急に医療機関の受診をおすすめします。一見ただの風邪や一時的な体調不良に見えても、感染症はあとから重症化することがあるからです。特に、小さい子供はささいな症状が重症化することも多いので気をつけましょう。
飼い主の健康状態を守るためには、ペットの健康状態を守ることも大切です。特に、動物由来の感染症は、動物の方は無症状だったり症状が出ていても軽症だったりするために飼い主が気づかず、知らないうちに飼い主に感染していることが多々あります。
ペットの体毛に潜んでいるダニやノミによって飼い主が感染してしまうケースもあるので、定期的な健康診断や予防注射を欠かさないようにしましょう。