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「いつまで続く、ウッドショック」と、そんな見出しの記事が、経済産業省のHPに掲載されています。
現在の木材価格の高騰は、何が原因で、今後どうなっていくのでしょうか。各情報をもとに調べてみました。
現在起こっている木材価格の高騰は、「ウッドショック」と呼ばれています。これは、1970年代に発生した「オイルショック」になぞらえたもの。その原因となっているのは、主に次のような事柄です。
世界的なコロナウイルスの感染拡大は、人を介し、木材価格の高騰にも暗い影を落としています。
まず挙げられるのがステイホームの影響です。
リモートワークが増加し、特にアメリカでは、都心部の集合住宅から郊外の一軒家への住み替えが増加しています。
住宅建築の需要の高まりとともに、木材価格も上昇。
さらには、木材そのものの不足にもコロナの影響が見られます。感染拡大により、世界中の輸送船の動きが鈍くなってしまったのです。
船舶会社は便数やコンテナ数を減らして対処していましたが、ワクチン接種が進み流通が回復しつつある今も、人材が以前のような状態にはなかなか戻っていません。
木材は現在、各国の取り合いといっていい状態です。
特にアメリカと中国での住宅需要を受けて、外国産の木材が日本に入荷されなくなってきました。
では、国内産の木材を使えばいいのでは……と思われるかもしれませんが、そうもいかない事情があります。
かつて盛んだった日本の林業は、低価格な外国産木材の輸入が増えるにつれ、衰退してしまいました。
だからと言って、これから国産の木材を増やそうにも、木の成長にも林業を営む人材の育成にも、10年20年の月日を要します。
昨今の異常気象により、アメリカでは複数の大規模な森林火災が発生しています。
アメリカで森林火災が多発していることは、皆さんもニュースで何度も目にしているのではないでしょうか。
森林火災は1度起こるとどんどん広がり、乾燥している季節は特に歯止めがかかりません。
2015年、アメリカ・カリフォルニア州北部で相次いで森林火災が発生したのは、記憶に新しいと思います。
このとき消失した森林の面積は約5万~8万ヘクタールにも及びました。
2020年にはアメリカ西海岸で大規模な森林火災が発生してます。
日本の住宅には、梁などにアメリカ松が使われていることも多く、その不足には大きな影響がもたらされます。
当然ですが樹木は1~2年では早々育ちません。地域の林業にもよりますが、おおよそスギもヒノキも20~30年程度を目途に伐採しているようです。
アメリカの大規模な森林火災からは日が浅く、日本の林業が復興するまでにもかなりの時間を要します。
コロナも、この先に何年続くかははっきりしません。
現在のウッドショックもいつまで続くかは不鮮明であり、木材の価格下降への見込みは今なお遠いのが現状です。
現在、木材会社には、輸入材木がほとんど入荷していません。材木を確保しようにも価格高騰し、簡単には仕入れできない事態が続いています。
柱や梁、土台といった構造に用いる材木だけでなく、現在はさまざまな建材の価格が上昇しています。
そのため木材をふだんに使った自然素材の住宅は特に、価格が高騰しがちです。
実際、自然素材の家を手がける建築会社の中には、ウッドショックを理由に住宅価格の改定をしているところもあります。
しかも、これから木材の高騰が落ち着くのか、ますます過熱するのかわからないのが大問題。自然素材の家を建てたくても、タイミングが難しい状況に陥っています。
自然素材の住宅をメインに手がけ、しかもその建築の多くを輸入木材によって建築してた業者の中には、住宅そのものを建てられなくなってきている会社も。
設計中の住宅であっても、いつ着工できるかわからなかったり、引渡し時期が遅れるなど、さまざまなトラブルが生じています。
そもそも住宅の引き渡し日は、住宅を建てる前に契約書に記載されています。着工が遅れると、不動産会社や施工会社の責任次第で、違約金を請求することもできるのです。
しかし、輸入木材の高騰に関しては、不動産会社や施工会社に責任を問えるとは限りません。その場合、違約金や保証金を請求することもできなくなります。
世界的に続くウッドショックですが、もう高額な値段でしか自然素材の住宅を手に入れられないのかと言えば、必ずしもそうではありません。
それは、建設会社の中には、国産木材をあらかじめ確保して住宅を建築しているところがあるからです。
こうした建設会社は、木材の価格高騰の波を全く受けないというわけではないものの、ウッドショックによる影響は少なくて済むと考えられています。
安い輸入木材に頼らず、国産木材を扱っている業者は自然素材の住宅にはこだわりを持っているところが多く見受けられます。
仮にウッドショックが収まったとしても、こうした素材へのこだわりが強い業者の家造りには信頼が置けます。
木材生産の垂直連携とは、簡単に言えば中間マージンを削除することにあります。
これまでの木材の生産から流通には、さまざまな流通過程を経てきました。林業から始まり住宅建築までの間に、数多くの業者が存在していたのです。
しかし、木材生産の垂直連携では、林業・製材工場・建設業者の3つに絞り、その他の過程を省くことで、中間マージンを削除することに成功しています。
国産木材を安定して使用している業者は、林業や製材工場との連携を上手が取れている証拠。
今後、輸入木材の価格がどのように変動しても、国産木材を扱っている建設業者には影響も少ないであろうと予測できます。
また、こうした木材の価格高騰への国内の対策として、工場の大規模化、端材や未利用材の活用など、木を大切に無駄なく活用する取り組みも加速していっています。